乱取基本の形当身技5本
徒手乱取り基本17本について
富木合気道には「乱取り競技」(乱取り試合)がありますが、そのもととなる稽古が「乱取り稽古」です。乱取り稽古には「徒手乱取り」と「短刀乱取り」がありますが、基本は「徒手」です。
ちなみに、徒手組手の稽古として掛り稽古、引立て稽古、乱取り稽古があり段々と実践的になってきます。
・「掛り稽古」とは、取と受を決め、受けが正面当てを当てに行ったのを取がさばいて技をかける稽古で左右行います。
・次に「引立て稽古」で、お互いに技を掛け合いますが、上段者が下段者の技を引き出してあげるように技をかけに行きます。下段者は自分から技をかけるか、または上段者に技をかけられたら返し技を掛けるかをして稽古します。もちろん左右自由に出します。
・最後の「乱取り稽古」は試合とほぼ同じようなやり取りで、お互い技を掛け合います。しかし試合ではないのでうまく技がかかったら、合わせるように受けをして技の掛ける感覚を養います。
この乱取り稽古に使う基本的な「技」として富木先生が「乱取り基本17本の形」として整理されました。
この「形の演武」の基本は「取と受と役割を決めて技を行います」。
取と受はまず3間離れた所から下段に構えながら互いに近寄り、「基本の間合い」になる時に「取」が手刀を中断に「サッ」と構えると、「受」はつられて同様に「サッ」と中断に構え、手刀合わせの状態に一瞬なる。その瞬間に、「取」は技を仕掛ける。(先の先)
(以降の「基本の技17本の技」の説明は、この手刀を合わせた瞬間からの動作の説明になります)
これは双方の気持ちのあり方として、お互いに相手を倒してやるという気持ちが盛り上がっていて、一触即発の状態であるという前提であることを意識することです。だから「取」がサッと手刀を出したら「受」はつられて手刀を出してしまうのです。
技をかける前に必ず相手を崩すことが重要です。
また、残心または残心に至る形(姿勢)は今かけた技が正しく掛けられたかを表していることを意識して残心の姿勢を取りましょう。
この乱取り基本17本の形だけでなく、「形」稽古の大事なポイントは「合わせる」と言うことです。特に受けは取の技に合わせて受けるということが、双方が技を理解し修得するためにも重要なのです。
そして残心の後、双方が目を離さないまま、ほぼ元の位置の3間の間合いに戻り、また次の技に行くべく「基本の間合い」まで進み、取は手刀をサッと出し技をかけに行きます。
それを17本繰り返して演武します。お分かりのように最初から最後までお互いに目を離さないことはとても大切です。
乱取り基本の形 ①正面当て
日本合気道協会には乱取り稽古がありますが、その基本となる技が17本あります。
その内の最初の5本が「当身技」となります。
①正面当て
この技は相手の内身に入り、相手にやられる危険性が高い難しい技です。
・取は、そのまま少し前に手刀を出し受けの手首を払い(崩し)、すぐに左手刀を自分の右手刀と受の右手刀の間に入れ、次の瞬間一歩右足を進めると同時に左手刀で受けの右手首を制し(崩し)、右掌底を受けの顎に当て左足を45度ほど右に移動し、右足を受の股の間に進めて正面当てにする。
・ポイント
-最初に受けの手刀を払う時、右斜めから打つのではなく、まっすぐ上から打ち払うこと。
-相手に反撃されないように、右手刀でしっかり崩し、さらに左手刀で崩しながら、まっすぐ入り右掌底を受けの顎に当てること。
画面クリックで動画
上記動画には「乱取り基本の技 当身技5本」が収録されてます。
乱取り基本の形 ②相構当て
② 相構当て
・取は出した右手刀を時計回りに回し受の右手首を払いながら左掌底で受の右の二の腕肘部分を下方から制する。
右手刀で受けの右手首を払うことにより受が少し前のめりになっていること(崩し)。少し前のめりになった受が戻ろうとしたときに、右掌底を受の顎に当て、右掌底に体重を乗せるように右足を一歩前に出し相構当てにする。
・ポイント
-右手刀で受けの右手刀を払う時に、右手首を掴んだり握ったりしないように、親指と中指ではさんでいる程度にする。
-左手で受の二の腕を制する時、肘に近い二の腕部分を取り、自分の左手と受けの二の腕が90度位になるような位置にいること。
すなわち、取や受の背丈などを考慮し、左足をどのくらい進めるか調節すること。
-受の顎に掌底を当てた姿勢では、正中線を保ちしっかり腰が入っていること。そのためにも左足の進め度合いと右足の位置は重要。(左足を進めるか、左右に足を入れ替えるか)
乱取り基本の形 ③逆構当て
③逆構当て
・取は出した右手刀をその流れで少し上に構え同時に左足を左45度に移動し、すぐに受けの右手首を「パシッ」と取り少し手首を内側に切り下ろす(崩し)。同時に右足を左足前に揃え受けと45度位の位置に移動。
次に左手刀を手刀動作Ⅱ-1のように構え、左足を進めると同時に左手刀を受けの左後頭部を打つように切り下ろし、逆構当てにする。
その時、受の右手を取っている右手は、下段に受の腹に押し当てる。
・ポイント
-右手で「パシッ」と取った時に人差し指辺りを意識し手首を少し切り下ろし受を崩すこと。
-左手刀で逆構当てをするとき、左足を大きく一歩入り受にしっかり身体が付くようにして受の左後頭部を打つような気持で打ち、左足を進めると自然に逆構当てになる。
乱取り基本の形 ④下段当て
④下段当て
・③のように逆構当てに行くところ受に左手でブロックされたため、右手で取った受の右手首を手刀動作Ⅱ-5のような動きで手首を返しながら受けの左耳方向に押し当て、次の瞬間に右膝を曲げ腰を落として左足を進め、左腕で受の腹部辺りを下段に当てる。
・ポイント
-右手で取った受けの手首は、手刀動作Ⅱ-5の動きを意識し受けの左耳に当てるようにするとスムースに返せる。
-下段に当てに行く時はしっかり腰を落とすこと。場合によっては右ひざが畳についても良い位に膝を落とし、自分の上半身はまっすぐな姿勢を維持すること。(お辞儀の姿勢はしないように)
-下段に当てるときは、回転気味にしたりせず下段に当てたまま、まっすぐ進むこと
乱取り基本の形 ⑤後ろ当て
⑤後ろ当て
・取は右手刀を出すと同時に左手刀も出し(合掌受けのように)左掌底を受の二の腕肘に当て、右足から右斜め前に押し進み、受を90度回転させ後ろを向かせ、同時に素早く受の左脇に移動し接して立ち、後ろ当てにする。
この形が原点であり、受の右肘を押しこんで後ろを向かせるやり方は、この形の応用となる。
ポイント
受と取が息を合わせ、特に受はふらつかないように転体すること